通関ビジネス実務検定ってどんな試験?そんな疑問にお答えします。
こんにちは、メーカー勤務で約10年ほど貿易事務員をしている 沢村(さわむら) です。
物流会社やメーカーでの貿易実務経験をもとに、皆さんのためになる情報を発信していきます。
今回は2021年12月より開始された 通関ビジネス実務検定試験 がテーマで、以下の内容についてまとめています。
- 通関ビジネス実務検定をおすすめしたい人
- 試験概要(難易度/試験形式/出題内容 など)
- 試験対策(おすすめの参考書/勉強方法 など)
筆者について
貿易実務10年の経験あり
※通関ビジネス実務検定受験時
通関ビジネス実務検定受験時の経歴は以下の通りです。
- 貿易実務10年程度の実務経験あり
- 貿易実務検定C級 取得済み
- 貿易実務検定B級 取得済み
- IATA ディプロマ 国際航空貨物取扱士(危険物) 取得済み
受験時、貿易実務に関して素人というわけではなく、10年程度の実務経験がありました。
通関ビジネス実務検定をおすすめしたい人
通関士試験への
ステップアップとしたい
輸出入業務を行っている /
これから関わりたい
通関ビジネス実務検定は、以下のような考えをもっている方におすすめしたい試験です。
- 通関士試験へのステップアップとして通関関連法務・通関関連実務の基礎知識を身に着けたい
- 個人で輸出入を始めてみたい
- 税関・フォワーダーの業務背景を理解して業務をスムーズにすすめることができるようになりたい
特に通関士試験へのステップアップとして最適な内容となっています。
荷出し人の立場で業務を行っているような方の場合、通関業務に関して深い知識を持っているわけではないため、通関士試験のテキスト・参考書を読んでも専門的な用語や業務背景が理解できず、どうしても試験勉強の最初の時点で心が折れてしまう可能性が高いです。
しかし通関ビジネス実務検定の出題範囲となる 通関関連法務および通関関連実務 では、通関士試験を受けるにおいての前提知識・常識となる情報がふんだんに詰め込まれています。
そのため、事前に通関ビジネス実務検定の勉強・資格取得を行なうことで、通関士試験のテキスト・参考書の内容が非常に理解しやすくなり効率的に勉強できるようになります。
ただし既に通関士試験の学習を開始している方は、通関ビジネス実務検定の学習をするよりも通関士試験対策をしっかりとこなすことをおすすめしますす。
個人で輸出入を行う場合、フォワーダーを利用して貨物アレンジ、輸出入手続きを行うことが大半です。
プロであるフォワーダーに手配を依頼すれば間違いはありませんが、通関関連法務・通関関連実務に関する最低限の知識を理解していないと、トラブルに巻き込まれたり、最悪の場合罰則を受ける可能性があります。
- 規制対象物品を理解していないために通関で貨物が止まり、販売先に貨物を届けることができず賠償責任を負わされる
- 関税の算出方法を理解していないために、税関による事後調査で追徴課税をうける
また通関ビジネス実務検定のテキスト・参考書で試験勉強を行なうことでサプライチェーンについての概要を学べるため、3PL・4PLを想定した業務を行いたい方には必須の知識となります。
試験概要
通関ビジネス実務検定とは
通関の基本スキルを
身につけるための試験
通関ビジネス実務検定とは日本貿易実務検定協会が主催する検定試験で、2021年12月から開始された試験です。
ベーシック(C級)とアドバンスト(B級)という2種類が定められておりますが、始まったばかりということもあり現時点ではベーシック(C級)のみが実施されています。
通関と聞くと通関士試験をイメージする方も多いかと思いますが、通関ビジネス実務検定試験では通関士試験よりも基礎的な問題が出題される試験となっています。
輸出入の基礎に加え、物流や地理的要因を加味した流通についての基本スキルを身につけることができる試験です。
資格有効期限
合格した検定試験の
受験日から4年間
通関ビジネス実務検定には有効期限があります。
期限は合格した検定試験の受験日から4年間となっており、4年目以降も資格を保持したい場合は再受験が必要となります。
検定試験実施日・申込受付期間
第4回 通関ビジネス実務検定C級
2023年5月21日(日)
第4回 通関ビジネス実務検定C級 は 2023年5月21日(日) に実施予定です。
項目 | 内容 |
---|---|
検定試験実施日 | 2023年5月21日(日) 9:00~16:15 |
申込受付期間 | 2023年3月2日(木) 12:00 ~ 2023年5月8日(月) 12:00 |
受験票発行 | 2023年5月11日(木) ~ 2023年5月14日(日) |
アカウント発行 | 2023年5月16日(火) |
合格発表 | 2023年6月23日(金) 12:00 |
詳細については以下の公式情報も参考にしてください。
通関ビジネス実務検定 実施履歴
2021年12月に第1回、2022年は5月と12月にそれぞれ第2回、第3回が実施されています。
5月と12月、年2回実施される方針のようです。
難易度
難易度:やさしい
独学で合格可能(C級)
指示をもとに通関業務を正確に行うことができるレベルの知識があれば合格は難しくない検定試験となります。
級 | レベル |
---|---|
アドバンスト(B級) | 通関業務を正確かつ迅速に行うことができ、指導的立場で 関税関係法令及び貿易関連業務に関してアドバイスができるレベル |
ベーシック(C級) | 通関業務上最低限必要な法知識、関連知識を理解し、 指示を受けて正確に業務を行えるレベル |
試験形式
オンライン Web試験
通関ビジネス実務検定C級の試験形式は以下の通りです。
試験はオンラインによるWeb試験で行われ「通関関連法務および通関関連実務」「通関関連知識、通関地理および通関実務計算」の2科目で構成されています。
項目 | 内容 |
---|---|
試験方法 | Web試験 |
試験構成 (科目/時間/配点) | 1) 通関関連法務および通関関連実務 / 60分 / 150点 2) 通関関連知識、通関地理および通関実務計算 / 50分 / 50点 |
合格ライン | 2科目の合計160点(80%)を基準として試験委員長の定める点 |
受験料 | 6,820円 |
通関関連法務および通関関連実務 出題形式
第1科目「通関関連法務および通関関連実務」の出題形式は以下の通りです。
問題 | 出題形式 | 問題数 | 配点 | 時間 |
---|---|---|---|---|
1 | 正誤(○×)式 | 20問 | 30点 | 15分 |
2 | 選択式 | 20問 | 45点 | 20分 |
3 | 語群選択式 | 10問 | 30点 | 10分 |
4 | 三答択一式 | 15問 | 45点 | 15分 |
第1科目「通関関連法務および通関関連実務」は4つの問題に分かれており、各問題ごとに定められた制限時間内に解答する必要があります。
例えば 2. 選択式 / 制限時間20分において時間が10分あまったとしても、その時間を別の問題 3. 語群選択式 に割り当てるといったことはできません。
各問題は 必ず1~4の順番で解く必要がありますが、 通関関連法務および通関関連実務 (9:00~15:30)の時間内であればどのタイミングで開始してもかまいません。
また問題1~4を休みなく連続で解く必要はなく、途中で休憩を入れながら受けることも可能です。
例えば以下のような時間配分で受験することが可能です。
通関関連知識、通関地理および通関実務計算 出題形式
第2科目「通関関連知識、通関地理および通関実務計算」の出題形式は以下の通りです。
問題 | 出題形式 | 問題数 | 配点 | 時間 |
---|---|---|---|---|
1 | 正誤(○×)式 | 20問 | 20点 | 15分 |
2 | 三答択一式 | 10問 | 20点 | 15分 |
3 | 三答択一式 (通関実務計算式を含む) | 5問 | 10点 | 20分 |
制限時間や問題を解く順番についての考え方は第1科目「通関関連法務および通関関連実務」科目と同様です。
第1科目「通関関連法務および通関関連実務」の問題1~4が解答済みの状態であれば、通関関連知識、通関地理および通関実務計算(9:30~16:45)の時間内で自分の好きなタイミングで試験を開始可能です。
出題範囲
通関ビジネス実務検定(2科目)の出題範囲は以下の通りです。
通関関連法務および通関関連実務
項目 | 内容 |
---|---|
税関とは | 税関の組織 |
税関の管轄地域 | |
税関の役割 | |
関税法の定義 | 輸出 |
積みもどし | |
輸入 | |
みなし輸入とみなし輸入に該当しない場合 | |
内国貨物と外国貨物 | |
輸出入通関 | 輸出入通関の流れ |
輸出入申告先の税関 | |
NACCSによる申告 | |
輸入許可前貨物の引取り承認 | |
輸出してはならない貨物と輸入してはならない貨物 | |
知的財産権侵害物品 | |
保税 | 保税地域の種類 |
各保税地域の機能 | |
保税運送 | |
輸出申告 | 輸出申告の内容 |
輸出申告の時期 | |
他法令と申告 | |
輸入(納税)申告 | 輸入(納税)申告の内容 |
輸入(納税)申告の時期 | |
他法令と申告 | |
外為法 | 輸出貿易管理令の概略 |
輸入貿易管理令の概略 | |
AEO制度について | AEO制度 |
特定輸出者と特定輸出申告 | |
特例輸入者と特例申告 | |
関税 | 関税の種類 |
関税の確定方式 | |
納税義務者 | |
修正申告と更正の請求 | |
税関長の更正・決定・賦課決定 | |
HSコードと関税率 | |
関税率表の解釈に関する通則 | |
課税価格 | 課税価格の決定の方法 |
課税価格の決定の原則 | |
課税価格の決定の原則を使った課税価格の計算 | |
輸出統計品目表 | 輸出統計品目表の見方 |
品目番号の選択 | |
実行関税率表 | 関税率表の解釈に関する通則 |
品目番号の選択 | |
税率の選択 | |
税額の計算 | 関税の計算(1品目の輸入) |
消費税・地方消費税の計算 | |
関税・消費税その他の知識 | 関税・消費税の軽減及び免除 |
関税の戻し税 | |
相殺関税と不当廉売関税 | |
通関業法の知識 | 通関業法の目的 |
通関業法と通関業者 | |
通関業者・通関士の義務 |
通関関連知識、通関地理および通関実務計算
項目 | 内容 |
---|---|
流通の意義 | 流通の意義 |
物流の意義 | |
輸送 | コンテナ船 |
コンテナターミナル | |
CYとCFS | |
コンテナ条約と国内法 | |
在来船 | |
船荷証券 | |
航空輸送の概略 | |
国際複合輸送 | |
航空運送状 | |
ロジスティクス | 3PLと4PL |
サプライチェーンマネジメント | |
その他の知識 | EPA(経済連携協定)の概略 |
特恵関税制度の概略 | |
関税暫定措置法8条の概略 | |
原産地証明 | |
分類の知識 | |
通関地理 | 日本の産業と貿易事情 |
世界各国の産業などの概要 | |
外国の通貨単位 | |
主たる空港のコード | |
時事 | |
計算実務 | 課税価格の計算 |
輸入税(関税・消費税・地方消費税) | |
輸出申告価格の計算 |
再チャレンジ制度
無料で再受験可能な回数は1回のみで、過去に再チャレンジ制度を利用したことがある場合は利用できません。
再チャレンジ制度の概要
通関ビジネス実務検定™のweb試験を受験し、万が一不合格になった方は、次回実施の検定試験(同じ級)のみ、無料で受験できる制度です。再チャレンジで受験できる回数は一回のみです。
既に再チャレンジ制度を利用された方は重ねて利用することはできません。
https://2busi.jp/application/rechallenge/
試験対策
勉強時間
初心者:50~60時間
経験者:10~20時間
私の場合は通関ビジネス実務検定C級受験時点で10年程度の実務経験があったため、15時間程度の勉強時間で合格することができました。
勉強方法
公式ガイドが必須
現状の選択肢としては以下があります。いずれも 日本貿易実務検定協会による公式のテキストや講座です。
- 公式ガイド 通関ビジネス実務検定(TM) 要点整理&練習問題
- 通信講座 C級1日集中対策講座(Web配信)
公式以外が発行しているテキスト・参考書は現時点では存在しないため、公式ガイド 通関ビジネス実務検定(TM) 要点整理&練習問題を必ず手元に用意するようにしましょう。
通関ビジネス実務検定については2021年12月に開始されたばかりの新しい試験であるため、現時点ではこの公式ガイドにほぼすべての情報が詰まっています。
私も試験対策に購入しましたが、試験対策だけでなく実務を行ううえでのマニュアルとしても非常に有用なテキストです。
まとめ
通関ビジネス実務検定のまとめです。
- 2021年12月に第1回が実施されたばかりの新しい認定試験
- 通関士試験へのステップアップに最適
- 試験対策には現状では公式ガイドが必須
試験後の所感
通関ビジネス実務検定試験は 通関士試験 と 貿易実務検定 の内容が組み合わさったような試験内容となっているため、公式ガイドに記載されている内容も 全体的に広範囲に幅広くまとめられた内容 といったイメージを受けました。
そのため貿易実務業務を1人でこなせるレベルのスキルがあるかたにとっては、やや物足りない(簡単な)内容と感じるかもしれません。私としては、もっと経験の浅かった以前の勤務先(NVOCC・倉庫業務を行なう会社)時代に学習することができていればなぁ、と思う内容でした。
みなさんそれぞれの目標と相談しながら通関ビジネス実務検定の受験を検討してみてください。
メーカー・商社勤務で何か資格が欲しいと考えている方は、本試験以外に貿易実務検定の受験もおすすめです。こちらはより実務で活用できる機会の多い内容です。
コメント