【国際航空貨物取扱士】 IATAディプロマ(IATA DIPLOMA)認定試験

国際航空貨物取扱士 IATAディプロマ
さわむら

国際航空貨物取扱士 IATAディプロマってどんな資格なんだろう?そんな疑問にお答えします。

こんにちは、メーカー勤務で約10年ほど貿易関連業務をしている 沢村(さわむら) です。

物流会社やメーカーでの貿易実務経験をもとに、みなさんのためになる情報を発信していきます。

今回は 国際航空貨物取扱士 IATAディプロマIATA DIPLOMA)、IATAディプロマ危険物IATA DANGEROUS GOODS DIPLOMA)という資格がテーマで、以下の内容についてまとめています。

  • IATAとは?
  • IATAディプロマ認定試験の概要
  • IATAディプロマ認定試験の事前準備・試験対策
目次

はじめに

IATAとは

国際航空運送協会
International Air Transport Association

IATAとは国際航空運送協会International Air Transport Association)のことで、国際線を運航する航空会社、旅行代理店、その他の関連業界のための業界団体です。

世界中のIATA加盟団体は、共通のルールにもとづき同一の輸送サービスが提供できる事を保証しています。日本では国際フレイトフォワーダーズ協会日本海運貨物取扱業会航空貨物運送協会が正会員として加盟しており、以下の活動を行っています。

  • 国際定期便のスケジュール調整のガイドライン制定
  • 航空運賃や発券・運用ルールの決定、実行

IATAの目的

航空会社の安全な運行

IATAは航空会社の安全な運行を一番の目的としており、航空貨物による貿易の推進や研究、業者間での協力を目指して活動しています。

活動目的には以下3つの柱があります。

  1. Cargo Safety(安全)
  2. Cargo Security(保安)
  3. Cargo Enviroment(環境保全)
さわむら

フライト中に事故があると逃げ場がないので、安全・保安・環境保全は大切ですね。

IATAの代理店制度

IATAでは航空券の販売に代理店制度をとっており、一定の基準で審査、認可された代理店が登録されます。

IATA公認貨物代理店に認定されると、世界各国のIATA加盟航空会社の航空券を自社で販売する権利を有し、代理店間での請求精算システムを使用することが可能になります。

貿易業務に関わる部分では、自社で航空貨物のB/Lを発券するためにIATA公認貨物代理店の資格が求められます。各営業所に基礎コース以上のディプロマ資格者、危険物コースのディプロマ資格者が各2名以上在籍していることが、IATA公認貨物代理店の店舗要件として定められています。

なお、近年台頭してきている格安航空会社はIATAに加盟していないため、今までのIATA基準運賃に満たない格安価格で運航ができています。

IATA航空危険物規則書について

IATA航空危険物規則書とは、国際民間航空機関(ICAO)の規則を業務で活用するためにかみ砕いて説明された規則書です。

各国の政府例外規定や運航会社例外規定も記載されています。

IATAディプロマ認定試験

IATAディプロマ認定試験とは

IATAディプロマ(IATA DIPLOMA)認定試験とは、国際航空運送協会International Air Transport Association = IATA)および国際貨物輸送業者協会連合会International Federation of Freight Forwarders Associations)が実施している国際資格です。

航空便手配の基礎となる国際航空貨物の基礎知識を学ぶ基礎コース、危険物の輸送に関わる知識を学ぶ危険物コースの2種類ががあります。

さわむら

航空会社の2レターコード、空港の3レターコードはIATAで決められたものであり、世界標準のものとなっています。2021年より実施された通関ビジネス実務検定試験にも出題されていました。

試験実施団体

日本国内でIATAディプロマ認定試験を受ける場合、以下の協会を利用する必要があります。

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協会公式サイト実施コース
JACIS 般社団法人航空危険物安全輸送協会http://www.jacis.or.jp/iataseminar.html危険物コースのみ実施
JAFA 一般社団法人航空貨物輸送協会http://www.jafa.or.jp/基礎コース、危険物コースを実施
さわむら

JACISでは基礎コースは実施されておらず、危険品コースのみの開講ですのでご注意ください。

試験の難易度

難易度:普通

試験の難易度は貿易実務関連の資格試験の中では、難しすぎることもなく、簡単すぎることもない、普通の難易度です。

私は JACIS 経由で IATAディプロマ危険物コースを受けて合格していますが、この試験では航空危険物規則書を正しく使用して各規則を確認できるかがポイントとなります。

さわむら

この航空危険物規則書はなんと1,300ページほどある分厚い規則書なので、取り扱いがとても大変でした…

試験概要

JACISとJAFAで受験方法や費用等が若干異なるため、これから受験を考えているかたのために簡単にまとめました。

JACIS

リカレントコースはIATA資格取得後に資格の期限延長を行う際にうけるコースです。これから受験を行う人はイニシャルコースを受けることになります。

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項目内容
受験形式会場受験
出題方式選択式と記述、実技
コース/費用イニシャルコース(標準):会員35,000円、非会員49,000円
イニシャルコース(放射性物質を含む):会員43,000円、非会員56,000円
リカレントコース(標準):会員23,000円、非会員35,000円
リカレントコース(放射性物質を含む):会員32,000円、非会員43,000円
最新版航空危険物規則書:会員7700円、非会員12,000円
開催場所東京、大阪、名古屋、福岡、沖縄、成田、長野
開催時期全国の拠点で週1回は開催 ※試験会場に空きがあれば随時
http://jacis.or.jp/image/schedule/schedule_2021.pdf
合格ライン80%以上で合格
※100点満点で80点以上で合格。
 放射線物質を含むコースは140点満点で112点以上で合格。 
 合格の場合、試験終了後1ヵ月以内に終了証が郵送
 不合格の場合、試験後3週間以内にEmailで連絡

JAFA

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項目内容
受験形式オンライン(リモート監視付き)
※タブレット、スマホでの受験不可。
 試験官とのコミュニケーションのためカメラとマイクは必須。
 本人確認のためパスポート又は国際運転免許(英語で証明ができるもの)が必要。
出題方式基礎コースは4択、危険物コースは記述式と4択問題
コース/費用基礎コース:US$339.00(別途IATAテキスト代送料 US$46.00)
危険物コース(イニシャル):US$320.00(別途IATAテキスト代送料 US$46.00)
危険物資格更新コース(リカレント):US$260.00(別途IATAテキスト代送料 US$46.00)
http://www.jafa.or.jp/_assets/attach/attach377.pdf
開催場所
開催時期奇数月の20日~月末までで年6回
期間内であれば24時間受験可、時間帯によっては試験官の人数による都合で先着順
さわむら

JACISは基本的に会場受験形式ですが、資格期限更新のリカレントコース(標準)ではセミナーをオンラインによるビデオ講義とすることが可能です。ただしこの場合でも試験は会場で受ける必要があります。

セミナーの内容

JACISでは試験を受ける前にセミナーを受講する必要があります。このセミナーは以下のような構成となっています。

リカレントコースは資格期限延長のためのコースであるため、ここでの説明は割愛します。

JACIS イニシャルコース(標準)

イニシャルコース(標準)では、3日間かけてセミナー受講、および修了試験を実施します。

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内容時間
航空危険物規則書の内容について60分
分類および区分について180分
識別について180分
包装について140分
マーキングおよびラベリングについて140分
書類について140分
微量危険物および少量危険物について80分
政府および運航者の例外規定について60分
受託チェックおよび情報の提供について60分
緊急時の対応について10分
修了試験(標準)180分

JACIS イニシャルコース(放射線物質を含む)

3日間かけて行うイニシャルコース(標準)の内容に加えて、+1日使って 放射性物質について 270分修了試験(放射性物質についての追加試験)90分 が追加された内容となっています。

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内容時間
航空危険物規則書の内容について60分
分類および区分について180分
識別について180分
包装について140分
マーキングおよびラベリングについて140分
書類について140分
微量危険物および少量危険物について80分
政府および運航者の例外規定について60分
受託チェックおよび情報の提供について60分
緊急時の対応について10分
修了試験(標準)180分
放射性物質について270分
修了試験(放射性物質についての追加試験)90分

IATAディプロマ試験対策

JACISとJAFAどちらを受験するかで試験に向けた準備・対策が異なりますが、今回は JACIS で IATAディプロマ危険物 – イニシャルコース(標準)を受ける想定での説明とします。

事前準備・試験対策

試験申し込み後、Webからハンドアウトをダウンロードすることができるようになります。危険品分類や危険品判定に関わる部分を確認することができるため、セミナー受講の前に必ず確認しておきましょう。

また航空危険物規則書を手元に持っている方は、事前に以下を行っておくことをおすすめします。

  • 航空危険物規則書の追補版を印刷しておく
  • 航空危険物規則書の目次活用方法をおさらいしておく
  • 重要箇所に付箋を張っておく(適合性要件、デクラ、ラベルAWB)

IATAディプロマ資格の必要性

IATAディプロマをおすすめしたい人

IATAディプロマは、業務で航空便の手配に携わる人におすすめの資格です。

しかし、他の貿易系資格と比べると費用が割高かつ必要な業務が限られ汎用性が低いということもあり、航空便での手配業務を行う予定がない場合は無理に取得を目指す必要はない資格とも言えます。

IATAディプロマ危険物に関しては、試験合格後24カ月間のみの有期資格であり、継続する場合はリカレントコースの受験が必要ということもあり、さらに費用がかかることになります。

法人で受験が必要な場合はトレーニング参加のための時間と費用を負担してもらえると思いますが、個人での受験ではこれらの負担が大きくなります。

IATAディプロマ資格が必要な理由

危険物の国際輸送においては以下の規則が適用されます。

違反があった場合は罰則の対象となることもあるため、IATAディプロマ資格が必要とされます。

  • IATA規則(ICAO規則)
  • 関係国の危険物規則(発地国、経由国、着陸国すべて)
  • 関係航空会社の危険物規定
  • 関係航空会社の属する国の危険物規則

まとめ

IATAディプロマ試験(JACISの場合)は、合格に必要な点数が80%以上と一般的な資格試験と比較するとやや高いため、難しいというイメージを持ってしまいがちです。

しかし事前に実施されるセミナーをしっかり受講すれば合格自体はさほど難しいものではありません。実際私の職場のチームメンバーも全員が合格していました。

そのため、こういった資格に興味があるのであれば、ぜひ本記事の内容を参考にして資格取得を目指してみてください。

余談

IATAの資格取得のためにJACISでのセミナーを受講した際、航空危険物規則書+テキストをセミナー会場まで持ち歩くのがとても大変でした…。

なにせこの航空危険物規則書、広辞苑3冊分くらいの大きさ・重さのあるどでかい本なんですよね。

さわむら

そのため、IATA試験に合格するためには、本の重さで壊れないようなカバンを持っていくことが大切ですよ。なんちゃって…

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この記事を書いた人

沢村 千佳 沢村 千佳 貿易事務

貿易事務を 10年 ほどやっています。

これまでの経験を元に貿易事務や資格試験に関する情報を記事にしていきます。

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