EPA制度(経済連携協定)と原産地規則・原産地証明書について

EPA制度(経済連携協定)と原産地規則・原産地証明書
さわむら

EPA制度(経済連携協定)と原産地規則・原産地証明書って何なんだろう?そんな疑問にお答えします。

こんにちは、メーカー勤務で約10年ほど貿易事務員をしている 沢村(さわむら) です。

物流会社やメーカーでの貿易実務経験をもとに、皆さんのためになる情報を発信していきます。

今回は、EPA(経済連携協定)の概要と実際にEPAを利用して輸出をする際の作業(原産地規則や原産地証明書)についてがテーマです。

目次

EPAの概要

EPAとは

経済連携協定
Economic Partnership Agreement

EPAとは Economic Partnership Agreement の略称で経済連携協定と呼ばれています。

特定の国や地域同士で貿易や投資を促進するための取り決めで、大まかには以下について協議・規定されています。

  • 輸出入にかかる関税の撤廃、削減
  • 投資環境の整備
  • 知的財産権の保護
  • ビジネス環境の整備
  • サービス業を行う際の規制の緩和、撤廃

輸出入時にEPAを使用するメリット

輸出入を行う際はWTOで決められた原則にもとづき、ほぼ全ての国に対して共通の税率(MFN税率)が適用されます。

しかしEPA提携国間では、この共通の税率(MFN税率)より低い税率を定めることが可能となり、他国よりも低い関税率(EPA税率)で輸出入を行うことができます。

  • WTO
    World Trade Organization の略称で「世界貿易機関」とも呼ばれます。全世界の大多数の国が加盟し、貿易に関するルール等を取り決めをし、易障壁(関税など)の削減や撤廃を目指す活動をしています。
  • MFN
    Most-Favored-Nation(最恵国)の略称です。

その他の税率について参考までに記載しておきます。

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種類内容
基本税率協定や別途法律で定めのない限り適用する原則的な税率
WTO協定税率WTO加盟国・地域に適用される税率
一般特恵税率
(GSP税率)
開発途上国から輸入される一定の農水産品・鉱工業産品に適用される税率
一般の関税率よりも低い税率(特恵税率)が適用される
暫定税率一時的に基本税率によりがたい事情がある場合に適用される税率
EPA税率EPA協定国・地域に適用される税率

EPAとFTAの関係

EPAと同じく、国や地域間の輸出入にかかる関税の撤廃や削減等を定めた国際協定として FTAFree Trade Agreement)とよばれる自由貿易協定があります。

EPAはこのFTAの内容に加えて「投資環境の整備」「ビジネス環境の整備」「知的財産保護の強化」等を含む包括的な協定です。

関税を減免することで貿易の自由化を進め物品のやり取りを活発化させることは、これまでWTOが中心となって行われてきました。

しかし、加盟国が多くなり、利害がぶつかり合う国が特定の品目について一律に関税を撤廃させることが難しくなってきた、といった理由から個別貿易協定(EPAやFTA)の交渉が進みました。

日本が締結するEPA

日本が世界各国と締結しているEPAは、2022年2月現在で20協定です。

  1. 日シンガポール協定
  2. 日メキシコ協定
  3. 日マレーシア協定
  4. 日チリ協定
  5. 日タイ協定
  6. 日インドネシア協定
  7. 日ブルネイ協定
  8. 日アセアン協定
  9. 日フィリピン協定
  10. 日スイス協定
  11. 日ベトナム協定
  12. 日インド協定
  13. 日ペルー協定
  14. 日EU協定
  15. 日米協定
  16. 日英協定
  17. 日オーストラリア協定
  18. 日モンゴル協定
  19. CPTPP(TPP11)
  20. RCEP

原産地証明書とは

EPAにもとづく原産資格を
満たしていることを
証明する書類

EPAにもとづく原産資格を満たしていることを証明する書類 を「原産地証明書」と言います。

日本から輸出される産品(製品)がEPAにもとづく原産資格を満たしていることを証明すると、相手国税関でEPA税率(通常の関税率よりも低い関税率)の適用を受けることが可能です。

この「原産地証明書」は「第三者証明制度」もしくは「自己申告制度」という制度を利用して作成します。このうち「自己証明制度」には「(完全)自己申告制度」と「認定輸出者自己証明制度」があります。

さわむら

原産地証明書は1種類ではなく、適用EPAによって必要な原産地証明書が異なるということを覚えておきましょう。

第三者証明制度

第三者証明制度とは、指定発給機関が原産地証明書を発行する制度です。

日本では、第三者証明制度による原産地証明書は「経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律」にもとづき、経済産業大臣が指定した発給機関である日本商工会議所が発給しています。

自己証明制度

第三者機関を介さない制度として自己証明制度があります。自己証明制度には、以下2種類の制度があります。

(完全)自己証明制度

(完全)自己証明制度とは、事業者が自ら原産地証明書を作成する制度です。

便宜上(完全)とつけていますが、単純に「自己証明制度」とも言います。

認定輸出者自己証明制度

認定輸出者自己証明制度とは、事業者が自ら原産地証明書を作成するという点では(完全)自己証明制度と同じですが、その事業者が経済産業省から認定された認定輸出者である必要があります。

EPA利用手順

輸出者としてEPAを利用する場合の手順について簡単に説明します。大まかには以下のような手順をふむことになります。

  1. 輸出産品のHSコードを確認する
  2. EPAでの関税を確認する
  3. どの協定を利用するか決定する
  4. 原産地規則の確認を行う
  5. 原産性を有することを示す書類を用意する
  6. 原産地証明書を発行する
さわむら

それぞれの手順について確認していきましょう。

輸出産品のHSコードを確認する

輸出産品のHSコードを確認します。

  • 最新年版のHSコードを確認する
    輸入国の現在の関税率を調べるために「輸入国の国内細分」まで確認します。
  • 協定別年版のHSコードを確認する
    原産地規則、関税撤廃スケジュール表の確認をするために、6桁(類、項、号まで)確認します。
協定HSコード
日メキシコ協定HS2002
日マレーシア協定HS2002
日シンガポール協定HS2002
日チリ協定HS2002
日インドネシア協定HS2002
日ブルネイ協定HS2002
日アセアン協定HS2002
日フィリピン協定HS2002
日ベトナム協定HS2007
日インド協定HS2007
日スイス協定HS2007
日ペルー協定HS2007
日オーストラリア協定HS2012
日モンゴル協定HS2012
CPTPP(TPP11)HS2012
RCEPHS2012
日EU協定HS2017
日米協定HS2017
日英協定HS2017
日タイ協定HS2017
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協定により採用されるHS年版が異なることを覚えておきましょう。

EPAでの関税を確認する

EPAを使用しない場合の税率(MFN税率)と EPAを適用した場合の税率(EPA税率)の差を確認します。段階的に関税率が低減される製品もあるため、譲許表(タリフスケジュール)の内容も参照しましょう。

日シンガポール協定では即時撤廃のため譲許表はありません。

製品によっては、そもそも無税であるEPA適用しても関税が低くならない場合がある、といったことがあるため、このような確認作業が必要です。

譲許表での1年目、2年目の区切り方について

  • 日、インドネシア、フィリピン 
    1年目:協定発効日~3/31
    2年目:4/1~3/31
    3年目:4/1~3/31
  • オーストラリア、マレーシア、ミャンマー、ニュージーランド、タイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、ブルネイ中、韓
    1年目:発行日~12/31
    2年目:1/1~12/31
    3年目:1/1~12/31
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場合によっては輸入者が税率を確認せずに、EPAの使用を求めてくる場合もあります。原産地証明取得にはコストがかかるため(作業コスト、商工会議所への発給の場合、支払う費用)無駄な作業を削るためにもEPAを適用して費用が低くなるか確認する作業は必須です。

どのEPAを利用するか決定する

仕向け国(輸出先)によっては利用できるEPAが複数存在することがあります。その場合は以下を確認して必要要件に合致するものを選択します。

関税率が一番低くなるのはどのEPAか
各EPAごとに関税撤廃スケジュールが定められています。
同じ国に、同じ商品の出荷でも関税率が異なる場合があるため注意が必要です。

原産地規則の要件をクリアしやすいのはどのEPAか
各EPAごとに原産地規則が定められています。
同じ国に、同じ商品の出荷でも原産地規則が異なる場合があります。

原産地規則の確認を行う

輸出する製品は以下の3種類に分類されます。

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項目内容
完全生産品材料をどこまでさかのぼっても原産材料のみ
原材料のみから生産される産品1次材料は原産材料で、2次3次とさかのぼると非原産材料が含まれる
非原産材料を用いて生産される産品
(実質的変更基準を満たす産品)
1次材料のうち少なくとも1つは非原産材料
EPA 原産地規則

輸出したい製品が、輸出先での原産地規則を満たしているかを確認するために、以下の作業を行います。

  1. 原産地規則ポータルにアクセスします。
  2. 「目的地別に探す」配下の「品目別原産地規則の検索」をクリックします。
原産地規則ポータル 品目別原産地規則の検索
  1. 国名 / Country に仕向け国、品目 / Item に HSコード6桁を入力し「検索/Search」をクリックします。
原産地規則ポータル 品目別原産地規則
  1. 品目別原産地規則/ PSR を確認します。
原産地規則ポータル 品目別原産地規則

原産地規則とは原産国を決めるためのルールです。原産地規則はEPAごとに異なる細則があります。

さわむら

各協定の本文と原産地規則を個別に確認したい場合は、以下のサイトを参照ください。

品目別規則に関わる3つの基準

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基準内容
関税分類変更基準
(CTCルール)
輸出製品のHSコードと非原産材料のHSコードが異なれば原産品とするルール。
※HS番号の変化に注意
付加価値基準
(VAルール)
生産によって輸出製品に付加された価値が一定の比率以上なら原産品とするルール。
※付加価値の増加に着目
加工工程基準
(SPルール)
特定の生産工程を行っていれば原産品とするルール。
※加工工程に着目

関税分類変更基準の中にはいくつかの変更レベルが設けられています。 

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変更レベル内容
類変更CC:Change in Chapter   
完成品と原材料で、HSコードの類(上2桁)の変更が生じていればOK
HS 41.07(牛革) =>42.02(おさいふ)
項変更CTH:Change in Tariff Heading
完成品と原材料で、HSコードの項(上4桁)の変更が生じていればOK
号変更CTSH:Change in Tariff Sub-Heading
完成品と原材料で、HSコードの号(上6桁)の変更が生じていればOK

品目別規則で実質的変更基準について記載されていますが、軽微で単純な作業にあたるものは原産資格を与えるにたらないという規定があります。例として日ASEAN 第30条で規定されている内容を以下に記載します。

(a) 輸送又は保管の間に産品を良好な状態に保管することを確保する作業(乾燥、冷凍、塩水漬けなど)その他これに類する作業

(b) 改装及び仕分け

(c) 組み立てられたものを分解する作業

(d) 瓶、ケース及び箱に詰めることその他の単純な包装作業

(e) 統一システムの解釈に関する通則2(a)の規定に従って一の産品として分類される部品および構成品の収集

(f) 物品を単にセットする作業

(g) (a)から(f)までの作業の組み合わせ

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_asean/pdfs/ajcep_k.pdf

原産性を有することを示す書類を用意する

EPAを使用するには、輸出したい製品が原産性を有していることを示す書類の準備が必要です。これらの書類は日本商工会議所へ原産品判定依頼をする際の根拠資料となり、事後調査の際に必要となります。

CTCルール(対比表)やVAルール(計算ワークシート)を利用して原産品を有していることを示す書類を作成します。また協定別に書類の保存期間も定められていることを忘れないようにしましょう。

原産地証明書を発行する

原産地証明書を発行します。原産地証明書の発行には大きく分けて以下2通りの方法があります。

  1. 第三者証明制度による発行
  2. 自己証明制度による発行

第三者証明制度(日本商工会議所への判定依頼・発給申請)

日本商工会議所への原産品判定依頼手順は以下の通りです。

  1. 日本商工会議所に企業登録を行う(1企業につき1登録)
  2. 日本商工会議所に原産品判定依頼を出す
  3. 日本商工会議所から判定結果が通達される(依頼主から必要な情報を入手後、原産品判定番号の付与まで原則3営業日)
  4. 特定原産地証明書の発給申請を行う(審査結果通知までは原則2営業日)

自己証明制度

原産地証明書は原則英語での作成が必要です。日EUでは付属書3-Dに規定する日本語による申告分を利用することができます。

通常の輸入申告書類(インボイス、パッキングリスト、B/L、輸入申告書)に加え、原産地証明書および原産品であることを明らかにする書類(原産品申告明細書、関係書類(製造工程表、契約書、部品表など))の提出が必要です。

さわむら

必要書類の提出を省略できるケースもあるので、国別、自己申告制度の手引き等も確認しましょう。

まとめ

EPAは出荷数量によっては大幅な関税コスト減につながりますが、初回輸出時の確認に相当量の時間が必要となる作業でもあります。作業上のポイントを本記事にまとめましたので、業務を行う上でのマニュアルとして活用して頂ければ幸いです。

また2022年1月に発行となったRCEPに関しては、従来どおりの確認では足りない項目も出てきています。大きな変更注意点については別記事にてまとめる予定です。

その他、原産地証明書のフォーマット、譲許表の見かた、より細かい規定については別記事にてまとめる予定です。

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この記事を書いた人

沢村 千佳 沢村 千佳 貿易事務

貿易事務を 10年 ほどやっています。

これまでの経験を元に貿易事務や資格試験に関する情報を記事にしていきます。

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