HS品目表の2022年改正ってどんな内容なんだろう?そんな疑問にお答えします。
こんにちは、メーカー勤務で約10年ほど貿易事務員をしている 沢村(さわむら) です。
物流会社やメーカーでの貿易実務経験をもとに、皆さんのためになる情報を発信していきます。
今回はHS品目表の2022年改正がテーマです。HSコードについては以下の記事にまとめていますので参考にしてみてください。
HS品目表の改正タイミング
5年ごとに改正
HS品目表は5年ごとに改正されます。
2022年現在は、2022年1月1日に発効された HS2022 が最新のHS品目表です。HS2022 の1つ前は2017年度に発効された HS2017 です。
HS品目表2022の改正背景
以下のような背景・理由をもとに、HS品目表2022の改正が行われます。
- 国際機関や条約事務局からの要請
- 国際貿易の多様化によるもの
- 新規商品の出現による新設
- 技術革新による分類明確化
- 貿易僅少による削除
HS品目表2022では何が変わったのか?
新設される項
前回の改正時(2017年)より取引量が増えた、かつ大幅な変更があったものに関して、新設された項の一例を紹介します。
項 | 内容 |
---|---|
03.09 | 魚等の粉、ミール及びペレット |
24.04 | たばこ等を含有する物品(電子たばこ等) |
38.27 | 炭化水素のハロゲン化物を含有する混合物 |
84.85 | 積層造形用の機械(3Dプリンター) |
85.24 | フラットパネルディスプレイモジュール |
85.49 | 電気電子機器のくず |
88.06 | 無人航空機(ドローン) |
88.07 | 航空機の部分品 |
2017改正ではハイブリッド車や自撮り棒等が追加されましたが 2022改正では電子たばこや、スマホ、3Dプリンター等が追加されます。
削除される項
削除される項の一部を紹介します。
項 | 内容 |
---|---|
81.07 | カドミウム及びその製品(貿易量僅少により) |
88.03 | 航空機の部分品 (88.07項新設による) |
統廃合されるもの
- 地球儀
- 石綿繊維関連
- ニッケル・鉄蓄電池
- カドミウム
- 一眼レフカメラ
- テリータオル地
- 留守番電話装置
- 時計の部分品のばね
第55回通関士試験では地球儀の分類が出題されていましたね。
化学製品関連での変更について
以下は私が利用することの多い化学製品関連におけるHS2022の主な変更点となります。
変更物品 | 類・項 | 変更内容 |
---|---|---|
ドロマイトラミングミックス | 第25類 第38類 | 耐火セラミックの分類を明確にするための改正 |
放射性材料 | 第28.44項 第28.45項 | 特定の放射線材料を分類する号を新設 分類細分によりテロ対策としての物品を判断することを目的にしている |
有機化学品に添加が 許容されるものの追加 | 第29類 | 催吐剤が追加 |
フェンタニル | 第29.33項 第29.34項 | 国際麻薬統制委員会(INCB)で規制対象リストへ追加されたことを受けた新設 |
ニコチン酸及びニコチンアミド | 第29.36項 | (ニコチン酸及びニコチンアミド:通称ビタミンB3)分類明確化のための改正 |
エフェドリン及びその誘導体 | 第29.39項 | エフェドリンは29.39のアルカロイドと異なり誘導体を他の細分に分類するため 分類誤りが起きやすい、かつ含有量10%以上は覚せい剤取締法の対象となるため改正 |
ロッテルダム条約の対象物質 | 第29類 第38類 | 有害な化学物質のモニタリングを容易にするための号の新設 |
モントリオール議定書が規制する オゾン層破壊物質 | 第29.03項 第38.24項 第38.27項 | モントリオール議定書が規制するオゾン層破壊物質のモニタリングを 容易にするための新設*HFCコードも付記された |
化学兵器禁止条約により 規制される物品 | 第29類 第38類 第39類 | 化学兵器禁止条約により規制される物品(12品目)にそれぞれHSコードを 割り当てと貿易量僅少により削除 |
カロテノイドの着色料 及びその調整品 | 第32.04項 | 分類明確化のための改正 |
炭素繊維 | 第68.15項 | 製品ごとの明確による貿易量の把握を目的に細分 |
卑金属およびその製品に関連する 用語の意義 | 第15部注 | 第74類-76類、第78類-81類の書く類中に規定されている用語意義を第15部の注へ移行 |
発光ダイオード(LED) | 第94類 | LED照明に関する分類、号の新設 |
半導体デバイス | 第85類 | 分類新設(8541.51)と類注に定義が新設 |
2022年改正後でも古いHS品目表を使う場合がある
HS品目表が改正された後でも、改正前の古いHSコードを使用する場合があります。
例えば、経済連携協定(EPA)では協定ごとに使用するHSコードの発効年度が定められています。そのため2022年1月1日にHS品目表が改正された後でも、TPPではHS2012を使用する、日米貿易協定ではHS2017を使用する、といった違いが出る場合があります。
EPA適用予定物品の税率と品目別規則を調べる時は、EPAで定められた発効年度でHSコードを確認する必要があるため注意が必要です。
まとめ
輸出入手配を行う際には正確な申告が求められます。
改正年度近辺では、改正対象の物品について一度確認を行うようにしましょう。 間違いが発覚した場合、過去にさかのぼっての追徴課税や加算税が発生することもあるため注意が必要です。
ケースによっては重加算税や延滞税が発生することもあるため、みなさん本当に気をつけてくださいね。
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